ステップ1(観測で使用する周波数を決める)
流星電波観測で使用する電波は,特に流星電波観測専用で送信されているわけではありません.アマチュア無線や航空無線など,流星電波観測として応用でき電波を受信します.
HRO(アマチュア無線の電波を利用)
アマチュア無線を利用した電波観測を使う場合,主に以下3つの周波数で観測することができます.お勧めは53.755MHzです.
53.755MHz(JH9YYA,50W,CW)
福井県立大学アマチュア流星電波観測研究会によって運用されているアマチュア無線です.HROの受信周波数としては,現在幅広く使われています.ソフトウェアラジオ(SDR)や汎用受信機であればセットすれば観測可能ですが,2000年代初頭に幅広く普及したHRO専用受信機の場合はそのままでは受信できませんのでご注意ください.
50.017MHz(JA6YBR,50/10/1/0.1W,CW)
宮崎大学無線部OB会によって運用されているアマチュア無線です.出力1Wと0.1Wでは実質的に受信できないため,観測できるのは50Wと10Wの時間帯となります.53.755MHz停波時や,福井在住で,53.755MHzの送信局が近すぎる場合などには,こちらの利用をご検討なさるのもよいかとおもいます.
50.027MHz(JE7YNQ,50W,CW)
福島県福島市から送信されるアマチュア無線です.75秒送信して15秒停止しているようです.国内でも何地点かで使われているようです.
杉本弘文氏による「HROのための送信情報」
FRO(FM放送の電波を利用)
地デジ移行に伴って,ワイドFMが始まったこともあり,2010年代から観測サイトが増えており,FM放送局の選局・受信環境次第では,豊富な流星エコーを観測することができます.使用できる周波数は,FM放送局の一覧から探すとよいでしょう.
基本的には,(1)観測地点から300km以上離れている地点で,(2)出力が1kWを超えているFM放送局を選ぶとよいでしょう.V-Low対応のアンテナを使うと,108MHzまで受信ができるので,韓国など朝鮮半島のFM放送局も受信対象になってきます.
実際どこを使うか?は手探りです.電波観測ライブで近隣のサイトでどこを受信しているか見るのもよいでしょう.また,榛名山麓流星電波観測所のwebには送信局情報の一覧もありますので,参考になるでしょう.
なお,関東地方で実績が多いのは,89.4MHz,92.5MHz,97.0MHzあたり.東北だと88.1MHzのNHK(大阪,10kW)も実績があります.なお,冒頭記述のとおり,北朝鮮の政策方針によって,朝鮮半島のFM送信は先行き不透明です.
HROでは受信状況が芳しくない場合やご自宅で周りの目が気になるといった場合は,むしろアンテナはFM放送アンテナのほうがHROアンテナよりも安価でサイズも小さくて軽いので,設置もしやすく,受信機もソフトウェア受信機(SDR)で受信できるので,トライする価値ありです.
周波数を選ぶ際のポイント
どの周波数を使うか?で悩む場合,それぞれのポイントを整理してみましたのでご参考になさってください。
HRO | FRO | |
---|---|---|
設置面 |
|
|
調整面 |
|
|
資金面 |
|
|
知識・スキル |
|
|
実績面 |
|
|
設置環境などに制約がない場合は,HROで観測されることをお勧めします.HROは実績が多く,始めるにあたって簡単なのはHROです.
FROの場合は,HROにはない「送信局を選ぶ」という手間が発生します.一方で,50MHz帯を使ったHROの場合,アンテナの横幅は3m近くになります.これだけのものをご自宅のさらにマンションのベランダに設置するのは,それはそれで勇気がいります(ご近所の目もあるし・・・).その場合はFROの方がよいでしょう.アンテナサイズもAF-4であれば横幅1.4mほどです.あとは金銭的制約がある場合,アンテナはFROの方が安いです.
本ホームページにおける紹介前提
この先のホームページでは,53.755MHzまたは50.017MHzのHROと,FM放送を利用したFROを紹介します.VORの場合は,アンテナの改造が必要になりややハードルがあがるので,以下杉本弘文氏のwebを参考にしてください.また,現在は定常的に観測することはできませんが,過去アマチュア無線では28MHzや144MHzを利用した観測もされていました.
- ご参考:VORの始め方(杉本弘文氏による)
使用する周波数を決めたら次は観測機材をそろえます.