ステップ1(観測で使用する周波数を決める)

流星電波観測で使用する電波は,特に流星電波観測専用で送信されているわけではありません.アマチュア無線や航空無線など,流星電波観測として応用でき電波を受信します.

HRO(アマチュア無線の電波を利用)

アマチュア無線を利用した電波観測を使う場合,主に以下3つの周波数で観測することができます.お勧めは53.755MHzです.

90年代後半より日本の流星電波観測を支えてきた,53.750MHz(JA9YDB,50W,CW)は,2018年4月をもって運用が停止されています.日本の流星電波観測を牽引いただきました.厚く御礼申し上げます.

53.755MHz(JH9YYA,50W,CW)HRO

福井県立大学アマチュア流星電波観測研究会によって運用されているアマチュア無線です.HROの受信周波数としては,現在幅広く使われています.ソフトウェアラジオ(SDR)や汎用受信機であればセットすれば観測可能ですが,2000年代初頭に幅広く普及したHRO専用受信機の場合はそのままでは受信できませんのでご注意ください.

50.017MHz(JA6YBR,50/10/1/0.1W,CW)HRO

宮崎大学無線部OB会によって運用されているアマチュア無線です.出力1Wと0.1Wでは実質的に受信できないため,観測できるのは50Wと10Wの時間帯となります.53.755MHz停波時や,福井在住で,53.755MHzの送信局が近すぎる場合などには,こちらの利用をご検討なさるのもよいかとおもいます.

50.027MHz(JE7YNQ,50W,CW)HRO

福島県福島市から送信されるアマチュア無線です.75秒送信して15秒停止しているようです.国内でも何地点かで使われているようです.

流星電波観測で活用できる電波(周波数)の最新情報が,杉本弘文氏から提供されています.
杉本弘文氏による「HROのための送信情報

FRO(FM放送の電波を利用)FRO

2024年1月15日現在,北朝鮮が対外扇動ラジオを中断し,手軽に使える送信局がなくなりました.今後新たな情報があればご連絡しますが,一旦は新たに始める方は「アマチュア無線を利用した電波観測」をご検討ください。(参考:[続報]朝鮮半島のFM放送について

地デジ移行に伴って,ワイドFMが始まったこともあり,2010年代から観測サイトが増えており,FM放送局の選局・受信環境次第では,豊富な流星エコーを観測することができます.使用できる周波数は,FM放送局の一覧から探すとよいでしょう.

基本的には,(1)観測地点から300km以上離れている地点で,(2)出力が1kWを超えているFM放送局を選ぶとよいでしょう.V-Low対応のアンテナを使うと,108MHzまで受信ができるので,韓国など朝鮮半島のFM放送局も受信対象になってきます.

実際どこを使うか?は手探りです.電波観測ライブで近隣のサイトでどこを受信しているか見るのもよいでしょう.また,榛名山麓流星電波観測所のwebには送信局情報の一覧もありますので,参考になるでしょう.

なお,関東地方で実績が多いのは,89.4MHz,92.5MHz,97.0MHzあたり.東北だと88.1MHzのNHK(大阪,10kW)も実績があります.なお,冒頭記述のとおり,北朝鮮の政策方針によって,朝鮮半島のFM送信は先行き不透明です.

HROでは受信状況が芳しくない場合やご自宅で周りの目が気になるといった場合は,むしろアンテナはFM放送アンテナのほうがHROアンテナよりも安価でサイズも小さくて軽いので,設置もしやすく,受信機もソフトウェア受信機(SDR)で受信できるので,トライする価値ありです.

周波数を選ぶ際のポイント

どの周波数を使うか?で悩む場合,それぞれのポイントを整理してみましたのでご参考になさってください。

HRO HRO FRO FRO
設置面
  • 幅が3m近いアンテナになる
  • HB9CVは軽いが,RY-62Vは重い
  • 部品数が多いので説明書をよく読むこと
  • AF4なら幅は1.4mで軽い
  • 組み立ては簡単.まず間違えることはない
調整面
  • 送信局を探す必要がない
  • アンテナ素子の長さ調整が必要
  • サイトにあったFM放送局を探す必要がある
資金面
  • アンテナがHB9CVで10,000円程
  • ケーブルは10mで3,000円程度
  • アンテナはAF4で3000円程度
  • ケーブルは10mで1000円程度
知識・スキル
  • 特にない
  • F型コネクタと同軸をつなぐ必要アリ
実績面
  • 97年頃から20年以上継続
  • 国内では一番使われている
  • 80年代に盛況も90年代に困難に.
  • 2010年半ば復活.最近はサイト数増

設置環境などに制約がない場合は,HROで観測されることをお勧めします.HROは実績が多く,始めるにあたって簡単なのはHROです.

FROの場合は,HROにはない「送信局を選ぶ」という手間が発生します.一方で,50MHz帯を使ったHROの場合,アンテナの横幅は3m近くになります.これだけのものをご自宅のさらにマンションのベランダに設置するのは,それはそれで勇気がいります(ご近所の目もあるし・・・).その場合はFROの方がよいでしょう.アンテナサイズもAF-4であれば横幅1.4mほどです.あとは金銭的制約がある場合,アンテナはFROの方が安いです.

本ホームページにおける紹介前提

この先のホームページでは,53.755MHzまたは50.017MHzのHROと,FM放送を利用したFROを紹介します.VORの場合は,アンテナの改造が必要になりややハードルがあがるので,以下杉本弘文氏のwebを参考にしてください.また,現在は定常的に観測することはできませんが,過去アマチュア無線では28MHzや144MHzを利用した観測もされていました.

本ページではHROとFROを前提に観測を始めるまでのステップを紹介します

使用する周波数を決めたら次は観測機材をそろえます.

ステップ一覧に戻る ステップ 2 機材をそろえよう